骨粗鬆症の治療で使われる注射の種類は?それぞれの特徴や注意点について解説

  • 2025.07.14
骨粗鬆症の治療で使われる注射の種類は?それぞれの特徴や注意点について解説

骨粗鬆症は骨密度の低下により骨がもろくなり、骨折しやすい状態になる病気です。

骨粗鬆症は主に薬物療法による治療が行われますが、その中でも内服薬を服用する方法と注射による方法の2種類あります。

この記事では、骨粗鬆症に使われる注射の種類について詳しく解説します。

骨粗鬆症の治療で注射を選んだ方が良い人の特徴や注射治療をするときの注意点、骨粗鬆症の注射に関するよくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

骨粗鬆症の治療に使われる注射の種類

骨粗鬆症の治療に使われる注射の種類

骨粗鬆症の治療に使われる注射には以下のような種類があります。

  • ・ビスホスホネート製剤
  • ・デノスマブ製剤
  • ・テリパラチド製剤
  • ・ロモソズマブ製剤
  • ・カルシトニン製剤

ここでは上記5種類の注射の特徴や治療頻度、費用相場などについて解説します。

ビスホスホネート製剤

ビスホスホネート製剤は骨粗鬆症の治療に使われる注射薬の中でも代表的なもので、内服薬として処方される場合もあります。

アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ミノドロン酸、ゾレドロン酸などの種類が代表的で、破骨細胞の働きを抑え、骨密度の上昇によって骨の破壊を防ぐのが主な効果です。

骨形成まで抑える働きがあり、逆流性食道炎や胸やけなどの副作用がある点には注意が必要です。

またごく稀にですが、顎骨壊死のリスクがある点も理解しておく必要があります。

ビスホスホネート製剤の注射治療は種類によって治療頻度が異なりますが、1週間、4週間、1年に1回の頻度で治療を行うものがあります。

治療費用に関しては保険が適用されるため、1割負担の場合1回当たり300円程度での治療が可能です。

デノスマブ製剤

デノスマブ製剤は、ビスホスホネート製剤よりも強い効果が期待できる薬です。

破骨細胞の働きを抑え、骨密度の上昇によって骨の破壊を防ぐ効果があります。ビスホスホネート製剤と同様に、ごく稀ですが顎骨壊死のリスクがあります。

治療頻度は半年に1回ですが、効果を持続させるためには継続使用が必要です。

自己判断で治療を中断すると骨密度が急激に低下し、骨折リスクが高まる恐れがあるため注意が必要です。

デノスマブ製剤も保険が適用されますが、1割負担の場合で1回当たり3,000円程度かかります。

しかし注射頻度は半年に1回で良いため、他の製剤と比べると安く抑えやすいです。

テリパラチド製剤

テリパラチド製剤は骨芽細胞の働きを促進させる効果がある種類で、骨折リスクが高い場合に選択されることが多いです。

副作用として吐き気を催すことがあります。

テリパラチド製剤は通院での皮下注射か、自宅での自己注射かが選べます。

通院の場合は週1回、自己注射の場合は毎日または週に2回程度の注射が必要です。

また治療費用は保険適用ですが、自己注射の場合は1割負担の場合で1か月あたり5,000円程度かかります。

ロモソズマブ製剤

ロモソズマブ製剤は骨粗鬆症の注射製剤の中でも新しい製剤の一つで、より高い効果が期待できます。

骨芽細胞の働きを促進させ、骨を作る効果があります。

ただし心血管疾患の既往がある患者さんに使用すると、稀に突然死のリスクがあるため、既往歴のある方は特に注意が必要です。

治療頻度は毎月1回で、1年間継続して注射を行う必要があります。

ロモソズマブ製剤も保険が適用され、費用感に関してはテリパラチド製剤とほぼ同程度です。

1割負担の場合は1か月あたり5,000円程度となります。

カルシトニン製剤

カルシトニン製剤は骨吸収を抑制する効果がある製剤で、強い鎮痛作用もある点が特徴です。

骨粗鬆症に伴って背中や腰に痛みが生じている場合に、鎮痛目的で選択されることが多いです。

カルシトニン製剤は比較的副作用の少ない種類ではありますが、悪心や低カルシウム血症(筋肉のけいれんやしびれ)などの症状が現れる場合があります。

治療頻度は週に1~2回程度で、筋肉内に注射を行います。

治療費用は1割負担で1か月あたり200円程度と、他の製剤と比べるとかなり安価です。

骨粗鬆症の治療で注射を選んだ方が良い人

骨粗鬆症の治療で注射を選んだ方が良い人

骨粗鬆症の治療で注射を選んだ方が良い人の特徴は以下の通りです。

  • ・骨密度の低下が著しい人
  • ・薬の内服を忘れがちな人

ここでは上記2つの特徴についてそれぞれ解説します。

骨密度の低下が著しい人

骨密度の低下が著しい人は、注射治療を選んだ方が良いでしょう。

骨密度が大幅に低下している人は骨折のリスクが非常に高いため、できるだけ早く効果を発揮する治療が求められます。

注射薬には骨を強化する作用が強いものや、骨吸収を抑える効果が高いものがあり、このような方に適しています。

治療を怠ると骨折を繰り返す可能性が高いため、医師と相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。

薬の内服を忘れがちな人

骨粗鬆症の内服薬は定期的に服用する必要があり、飲み忘れると効果が十分に発揮されません。

特に忙しい生活を送っている人や複数の薬を服用している人にとって、内服管理は負担になってしまう場合があります。

その点、注射薬は1カ月に1回や半年に1回の投与で済むものもあり、飲み忘れの心配がありません。

さらに内服薬による胃腸の不調を避けたい人にも、注射は有効な選択肢となります。

継続的な治療が求められる骨粗鬆症だからこそ、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

骨粗鬆症の注射治療をするときの注意点

骨粗鬆症の注射治療をするときの注意点

骨粗鬆症の注射治療をするときの注意点は以下の通りです。

  • ・歯の治療は必ず医師に相談する
  • ・骨腫瘍のある人は使えない種類がある
  • ・注射が苦手な場合は内服薬を検討する
  • ・栄養バランスの整った食事をとる
  • ・骨のもととなる栄養素を積極的に摂取する
  • ・適度な運動を継続する

ここでは上記6つの注意点についてそれぞれ解説します。

歯の治療は必ず医師に相談する

骨粗鬆症の注射薬の中には、顎骨の血流に影響を与えるものがあります。

そのため抜歯やインプラントなどの歯科治療を受ける際は必ず医師に相談しましょう。

特にビスホスホネート製剤やデノスマブを使用している場合、顎骨壊死のリスクが高まることが知られています。

事前に歯科医と主治医の両方と話し合い、適切な治療計画を立てることが大切です。

万が一歯科治療が必要な場合は、タイミングを調整することでリスクを軽減できます。

骨腫瘍のある人は使えない種類がある

骨粗鬆症の注射薬にはいくつかの種類があり、その中には骨の代謝に影響を与えるものもあります。

特に骨腫瘍のある人は、一部の薬剤(フォルテオやテリボンなど)を使用できない場合があるため注意しなくてはいけません。

例えば骨形成を促進するタイプの薬は、腫瘍の成長を助長する可能性があるため、基本的に骨腫瘍がある方への使用は禁忌となっています。

過去に放射線治療を受けた経験のある方や原発性の悪製骨腫瘍・転移性骨腫瘍がある方は、必ず事前に医師に相談しましょう。

注射が苦手な場合は内服薬を検討する

骨粗鬆症の治療は長期間続ける必要があるため、無理なく継続できる方法を選ぶことが大切です。

注射が苦手な人は、内服薬治療への変更を検討してみましょう。

内服薬には毎日服用するタイプや週に1回のタイプなどがあり、ライフスタイルに合わせて選べます。

ただし同じ名前の薬でも成分量によって飲む間隔やタイミングが異なるため、医師の指示にきちんと従うことが大切です。

また内服薬にも副作用のリスクがあるため、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけましょう。

栄養バランスの整った食事をとる

骨粗鬆症の治療を効果的に進めるためには、栄養バランスの取れた食事をとることが大切です。

カルシウムやビタミンDをはじめとする骨に必要な栄養素を摂取することはもちろん、タンパク質やマグネシウムなども意識的に取り入れるようにしましょう。

さらに過剰な塩分やカフェイン、アルコールの摂取はカルシウムの吸収を妨げるため注意が必要です。

毎日の食事を見直し、骨の健康を維持するために適切な栄養を摂ることを心がけましょう。

骨のもととなる栄養素を積極的に摂取する

骨の健康を支えるためには、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを意識して摂取することが大切です。

カルシウムは牛乳やチーズ、小魚などに多く含まれ、ビタミンDは日光を浴びることで体内で合成されます。

また納豆や緑黄色野菜に含まれるビタミンKは、骨の形成を助ける働きがあります。

これらの栄養素をバランスよく摂ることで、注射治療の効果をより高めることが可能です。

適度な運動を継続する

骨の強化には、食事だけでなく適度な運動も欠かせません。

特に骨に適度な刺激を与える運動は骨密度を維持し、骨折のリスクを減らすのに役立ちます。

ウォーキングや軽いジョギング、スクワットなどの体重負荷を伴う運動は、骨を強くするのに効果的です。

また筋力を維持することで転倒を防ぎ、骨折のリスクも低減できます。

無理のない範囲で継続的に運動を取り入れ、骨の健康を守ることが大切です。

骨粗鬆症の注射に関するよくある質問

骨粗鬆症の注射に関するよくある質問

骨粗鬆症の注射治療に関するよくある質問をまとめました。

  • ・骨粗鬆症の注射の痛みはどのくらい?
  • ・骨粗鬆症の注射の副作用やリスクは?
  • ・骨粗鬆症の注射の費用は?
  • ・骨粗鬆症の注射後に気を付けることは?

ここでは上記4つの質問についてそれぞれ解説します。

骨粗鬆症の注射の痛みはどのくらい?

骨粗鬆症の注射は、皮下または筋肉に投与するタイプがあり、痛みの程度は個人差があります。

一般的に皮下注射はチクッとする程度で、採血時の針の痛みと同じくらいと感じる人が多いです。

一方、筋肉注射は皮下注射よりもやや痛みを伴うことがありますが、数秒で終わるため耐えられる程度です。

使用する針も細いため、大きな負担にはなりにくいでしょう。

注射後に軽い腫れや赤みが出ることもありますが、通常は数日以内に治まります。

骨粗鬆症の注射の副作用やリスクは?

骨粗鬆症の注射薬にはいくつかの種類があり、それぞれ副作用やリスクが異なります。

代表的なものとして注射部位の腫れや痛み、発熱、倦怠感などが挙げられます。

またビスホスホネート製剤やデノスマブなどの薬剤では、顎骨壊死のリスクがあるため、歯科治療の際には注意が必要です。

カルシトニン製剤では吐き気や顔のほてりが見られることもあります。

副作用が心配な場合は、事前に医師と相談し、リスクを理解した上で治療を進めることが大切です。

骨粗鬆症の注射の費用は?

骨粗鬆症の注射の費用は、使用する薬剤の種類や投与頻度によって異なります。

一般的な皮下注射は1回あたり数百円から数千円程度かかることが多いです。

健康保険が適用されるため、自己負担額は医療費の1〜3割になります。(年齢や収入によって変動)

費用が気になる場合は、事前に医師に相談しておくと安心です。

骨粗鬆症の注射後に気を付けることは?

注射後は投与部位の腫れや痛みが出ることがあるため、強く押さえたり刺激を与えたりしないようにしましょう。

ビスホスホネート製剤は、体調管理のために十分に水分を取ることをおすすめします。

また一部の注射薬では、急に中止すると骨折のリスクが高まることがあるため、自己判断で治療をやめないように注意しましょう。

栄養バランスの整った食事や適度な運動などの生活習慣の改善も大切なポイントです。

まとめ

骨粗鬆症の注射治療には、ビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤、テリパラチド製剤、ロモソズマブ製剤、カルシトニン製剤などがあります。

種類によって注射頻度や費用相場が異なるため、症状や予算を考慮して医師に相談するとよいでしょう。

また骨粗鬆症は内服薬での治療も可能なため、注射が苦手な方は内服薬治療への変更も検討してみてください。

西尾久リウマチ整形外科』では、検査結果を踏まえて、患者さんが継続しやすい治療方法を提案しています。

骨密度検査機や血液・尿検査による精度の高い検査が可能なため、骨粗鬆症の疑いがある方はぜひ当院までご相談ください。

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