リウマチと花粉症の関係性とは?それぞれの症状や治療方法について解説
- 2025.07.17

関節リウマチ(以下、リウマチ)は関節に痛みや腫れが生じる病気で、花粉症は花粉が原因となってくしゃみや鼻水などの症状を引き起こす病気です。
一見すると何の関係性もないように見えるこの2つの病気ですが、実は意外な関係性があることをご存知でしょうか。
この記事では、リウマチと花粉症の関係性について詳しく解説します。
リウマチと花粉症に共通した対策方法や薬を併用するときの注意点、それぞれの症状・検査・治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
リウマチと花粉症の関係性
リウマチと花粉症は一見すると無関係のように思えますが、どちらも免疫システムの働きが関与している疾患であり、関連性があるのではないかと考えられています。
リウマチは自己免疫疾患の一種で、免疫システムが正常な細胞を誤って攻撃し、関節の炎症や痛みを引き起こす病気です。
一方、花粉症はアレルギー性疾患であり、花粉という外部の異物に対して過剰な免疫反応を起こすことで症状が現れます。
どちらも免疫システムの異常によって発症するため、相互に影響を及ぼす可能性があると考えられています。
では免疫反応が過剰になり花粉症が悪化すると、リウマチの症状も同時に悪化するのかというと、実際はそうではありません。
それぞれの症状を引き起こす原因となる免疫細胞は、リウマチと花粉症で種類が異なり、どちらか一方が増えるとどちらか一方が減るという仕組みになっています。
そのため花粉症の症状が悪化しているときにはリウマチの症状が軽くなり、リウマチの症状が悪化しているときには花粉症の症状が軽くなるという現象が起こります。
このことから、もともと花粉症を持っていてリウマチの症状が軽快してきている場合、花粉症の症状が悪化する可能性があるでしょう。
その逆もまた然りのため、それぞれの症状を見て、早めに対策を行うことをおすすめします。
リウマチも花粉症もストレスを減らすことが大切
リウマチと花粉症はそれぞれ異なる病気ですが、どちらも免疫システムが深く関係しています。
そして免疫システムを乱す大きな要因の一つがストレスです。
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを崩し炎症を悪化させることがあるため、リウマチや花粉症の症状を和らげるには、ストレスを上手に管理することが重要です。
ストレスを軽減することで、免疫システムのバランスが整い、症状の緩和が期待できます。
リウマチや花粉症の症状を抑えるためには、日常的にストレスを減らす習慣を取り入れることが大切です。
例えば、適度な運動はストレス解消に効果的です。
ヨガやストレッチ、ウォーキングなどの軽い運動を行うことで血流が改善され、リラックス効果も得られます。
また深呼吸や瞑想、アロマテラピーなどのリラクゼーションも自律神経を整え、ストレスを和らげるのに役立つでしょう。
さらに十分な睡眠を確保することも重要です。睡眠不足は免疫機能を低下させるだけでなく、ストレス耐性を弱めるため、リウマチや花粉症の症状が悪化しやすくなります。
寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えることで、質の良い睡眠をとることができます。
リウマチと花粉症の薬を併用するときの注意点
リウマチと花粉症の薬を併用するときの注意点として、以下の2点が挙げられます。
- ・薬の成分の重複によって効きすぎてしまう場合がある
- ・ステロイドを使っている場合は花粉症の受診時に医師に相談する
ここでは上記2つの注意点についてそれぞれ解説します。
薬の成分の重複によって効きすぎてしまう場合がある
リウマチと花粉症の薬には同じ成分が含まれる場合があり、成分の重複によって効きすぎてしまうことがあります。
リウマチで生物学的製剤の注射治療を行っている場合、注射によるアレルギー反応を抑えることを目的として、アレルギーを抑える薬を使っているケースがあります。
このようなケースでは、よく確認しないまま使用することで花粉症の薬と成分が重複し、薬の効果が強くなりすぎることがあるため注意が必要です。
眠気や口の渇きなどの症状が強くなる可能性があり、その結果、日中の活動に支障が出たり注意力が低下したりすることもあります。
リウマチと花粉症どちらも薬による治療を行っている場合は、薬の成分が重複しないか医師に確認しましょう。
ステロイドを使っている場合は花粉症の受診時に医師に相談する
リウマチの治療にステロイドを使用している場合は、花粉症の受診時に医師に相談することが大切です。
花粉症の治療にもステロイドが使用されることがあるため、同じものが処方されると量が多くなりすぎてしまう恐れがあります。
ステロイドの副作用には感染症や副腎不全、消化管障害、精神神経障害などがありますが、投与量が多くなるほどこれらの症状が現れるリスクが高まる傾向にあります。
そのためリウマチの治療と花粉症の治療で同じステロイド薬が処方されると、副作用のリスクが高まってしまうため注意が必要です。
花粉症の受診時に薬手帳を見せ、リウマチの治療薬と一緒に飲んでも問題のない薬を処方してもらいましょう。
リウマチの症状・検査・治療方法
リウマチは、自己免疫の異常によって関節に炎症が生じる慢性疾患です。
進行すると関節の変形や強い痛みを伴い、日常生活に支障をきたすことがあります。
ここではリウマチの症状や原因、診断・検査方法、治療方法について解説します。
リウマチの症状
リウマチの主な症状は、関節の痛みや腫れ、こわばりです。
特に朝起きたときに関節が動かしにくくなる『朝のこわばり』が特徴的です。
症状は手指や手首、足の関節から始まることが多く、進行すると肘や膝、肩など全身の関節に広がることもあります。
また関節の炎症が長く続くと、軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまうことがあります。
さらにリウマチは関節だけでなく、全身に影響を及ぼすことがあり、倦怠感や微熱、体重減少などの症状が見られることもある病気です。
重症化すると肺や心臓、血管などの臓器にも影響を与えることがあるため注意が必要です。
リウマチの原因
リウマチの明確な原因はまだ解明されていませんが、自己免疫の異常が関与していると考えられています。
通常、免疫システムは細菌やウイルスなどの異物を攻撃しますが、リウマチでは誤って自分自身の関節を攻撃して炎症を引き起こしてしまうのです。
遺伝的要因が関係する可能性が高く、家族にリウマチの方がいる場合、発症リスクが高くなるとされています。
また環境要因も影響を及ぼし、喫煙やストレス、ウイルス感染などが発症の引き金になることがあります。
特に喫煙はリウマチの発症リスクを高めるだけでなく、症状を悪化させる要因にもなるため、禁煙が推奨されることが多いです。
さらに女性の発症率が男性よりも高いことから、ホルモンバランスの変化も関係している可能性が指摘されています。
リウマチの診断・検査方法
リウマチの診断・検査方法は、医師による問診、血液検査、尿検査、画像検査などが挙げられます。
まずは医師が患者さんの症状を詳しく聞き、関節の腫れや痛み、こわばりの有無を確認します。
特に朝のこわばりが1時間以上続く場合や左右対称に関節の腫れが見られる場合は、リウマチの疑いが高いです。
ただし問診だけでは正確な診断はできないため、以下のような検査も実施します。
検査方法 | 検査項目・種類 | 検査内容 |
---|---|---|
血液検査 | CRP(C反応性タンパク) | 関節炎の程度を調べる |
抗CCP抗体 | リウマチの早期診断に応用される | |
リウマトイド因子 | 自分の体や細胞に対して生成される抗体で、値が高いとリウマチの可能性が高い
ただし陰性でもリウマチの可能性は残る |
|
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-3) | 関節中の滑膜組織から作られる組織で、治療薬の効果を調べるのに有効 | |
血沈 | 試験管の中を血液中の赤血球がどれくらい沈むかを調べる検査
炎症の程度を調べるのに有効 |
|
尿検査 | – | リウマチが長期化すると腎機能の低下によって尿にタンパクが出る場合があることを利用した検査 |
画像検査 | X線検査 | リウマチの進行度を確認できる検査 |
関節超音波検査 | リウマチの早期診断や関節の炎症の程度の確認に有効な検査 | |
CT検査 | 首や太ももに現れる病変を確認するのに有効な検査 | |
MRI検査 | 骨の中で起こる炎症や滑膜の増殖度合いを確認するのに有効な検査 |
リウマチの治療方法
リウマチの治療方法には薬物療法、手術療法、リハビリテーションがありますが、基本的には薬物療法による治療が中心になります。
薬物療法で使用される薬には以下のような種類があります。
- ・抗リウマチ薬:免疫の異常な働きを抑制し、関節の炎症を軽減する
- ・生物学的製剤:炎症を引き起こす特定の物質を抑制する
- ・JAK阻害剤:細胞内のシグナル伝達を遮断し、免疫の過剰な働きを抑制する
- ・非ステロイド性抗炎症薬:痛みや炎症を抑える
また薬物療法と並行して、リハビリテーションや生活習慣の改善を行うことが多いです。
花粉症の症状・検査・治療方法
花粉症は、スギやヒノキ、ブタクサなどの植物の花粉が原因となって引き起こされるアレルギー疾患です。
毎年決まった時期に症状が出ることが特徴で、日本では特に春のスギ・ヒノキ花粉の影響を受ける人が多くいます。
ここでは花粉症の症状や原因、診断・検査方法、治療方法について解説します。
花粉症の症状
花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血などです。
これらはアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎と呼ばれる症状で、花粉が鼻や目の粘膜に付着することで起こります。
くしゃみは異物を体外に排出する防御反応であり、頻繁に続くことが特徴です。
鼻づまりがひどくなると、口呼吸になり、喉の乾燥や睡眠の質の低下につながることがあります。
また目のかゆみや充血が強い場合は、日常生活に支障をきたすこともあります。
さらに症状が悪化すると、のどの痛み、皮膚のかゆみ、頭痛、倦怠感、集中力の低下などの全身症状が現れることも少なくありません。
重症の場合は、花粉の多い時期に仕事や学業のパフォーマンスが大きく低下することがあるため、早めの対策が必要です。
花粉症の原因
花粉症は、免疫システムが本来無害な花粉を異物と認識し、過剰に反応することで現れる症状です。
花粉症の発症は遺伝的な要因も大きく、両親のどちらかが花粉症である場合、子どもが発症するリスクが高くなるため注意が必要です。
また生活環境や食生活も影響を与えることがあり、大気汚染やストレス、偏った食生活などがアレルギー反応の悪化に関与している可能性があります。
花粉の種類によって発症時期が異なり、春のスギやヒノキの花粉症が最も多いですが、夏にはイネ科、秋にはブタクサやヨモギが原因となることもあります。
花粉症の診断・検査方法
花粉症の診断は、問診や各種検査を組み合わせて行います。
まず医師が患者さんの症状や発症時期、家族歴を詳しく聞き取り、花粉症が疑われるかを判断します。
特に毎年同じ時期に症状が出る場合は、花粉症の可能性が高いです。
さらに問診だけでなく、以下のような検査も実施します。
- ・血液検査:IgE抗体の有無を調べ、どの花粉に反応しているかを確認する検査
- ・鼻汁検査:アレルギー反応の有無を確認する検査
- ・鼻腔検査:鼻の粘膜の状態を観察し、炎症や腫れの程度を確認する検査
これらの検査結果を総合的に判断することで、花粉症の確定診断が可能になります。
花粉症の治療方法
花粉症の治療方法には、薬物療法、アレルゲン免疫療法、生活習慣の改善などがあります。
薬による治療が最も一般的で、抗ヒスタミン薬、ステロイド点鼻薬、抗ロイコトリエン薬などが使用されます。
ただしこの治療方法は症状を緩和させるためのものであり、花粉症の根本的な改善には至りません。
根本的な治療を目指す方法として、アレルゲン免疫療法があります。
これは少量のアレルゲンを体内に取り入れ、徐々に体を慣らしてアレルギー反応を弱める治療法です。
ただし長期間(3~5年)の治療が必要であり、すべての患者さんに適用できるわけではありません。
症状の程度や患者さんのライフスタイルに応じて、適切な治療方法を選択することが大切です。
まとめ
リウマチと花粉症はどちらも免疫システムの異常反応によって引き起こされますが、それぞれの症状を引き起こす原因となる免疫細胞は異なります。
そのためリウマチが悪化すると花粉症が軽快し、花粉症が悪化するとリウマチが軽快するといった状況がよくみられます。
リウマチと花粉症両方を発症している方は、この2つの症状をよく観察しておくことで、症状の悪化や軽快を予測しやすくなるでしょう。
『西尾久リウマチ整形外科』では、リウマチの検査や治療を行っています。
関節の痛みや腫れが悪化すると花粉症の症状が軽快する場合、リウマチの可能性が考えられるため、一度検査を受けてみることをおすすめします。
当院では日本リウマチ学会専門医・指導医による検査・診断・治療を行っているため、気になる方はぜひご相談ください。