関節炎とリウマチの違いとは?症状や検査・治療方法について解説
- 2025.07.11

関節に炎症が起こると、痛みや腫れなどの症状が現れます。
よく聞く症状・病気の名前に関節炎やリウマチが挙げられますが、この2つの違いをあまりよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、関節炎とリウマチの違いについて解説します。
関節リウマチと似た症状・病気や主な原因・症状、診断基準・検査方法、治療方法などもまとめているため、関節の症状でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
関節炎とリウマチの違い
関節炎とリウマチの違いを簡単にまとめると、関節炎は『関節に起こる炎症の総称』、リウマチは『関節に炎症を引き起こす病気の一つ』です。
関節炎はさまざまな病気で起こる症状の一つであり、関節部分に痛みや腫れが生じている状態のことです。
関節炎を引き起こす代表的な疾患としては、関節リウマチや痛風、感染症、更年期障害などが挙げられます。
リウマチは関節炎を伴う病気の一つで、30~50代の女性に多く見られます。
免疫異常が原因で生じる病気のため、微熱や倦怠感、食欲不振といった関節炎以外の症状が現れる場合も少なくありません。
関節リウマチと似た症状・病気
関節リウマチと似た症状・病気として以下が挙げられます。
- ・膠原病
- ・線維筋痛症
- ・変形性関節症
- ・腱鞘炎
- ・化膿性関節炎
- ・痛風
- ・脊椎関節炎
ここでは上記7つの症状・病気についてそれぞれ解説します。
膠原病
膠原病は、本来自分の体を守るために働く自己免疫反応に異常が生じ、自分の体を攻撃してしまう病気の総称です。
関節リウマチもそのうちの一つで、他には全身性エリテマトーデスや強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合結合組織病、シェーグレン症候群、抗リン脂質抗体症候群などが該当します。
関節に症状が現れるものもあれば、肺や心臓などの臓器、皮膚、目や口などに症状が現れる病気もあります。
原因がまだはっきりとわかっていない病気も多く、経過が長期にわたるのが共通する特徴です。
線維筋痛症
線維筋痛症は、全身のさまざまな筋肉・関節に激しい痛みやこわばりなどの症状が現れる病気です。
リウマチ性疾患に分類されていますが、実際は自己免疫反応に異常は見られない『機能的なリウマチ性疾患』となります。
関節に慢性的に激しい痛みが生じることで、日常生活に支障が出やすい病気です。
疲労感や倦怠感、不安感・抑うつ感、不眠などの身体的・精神的な症状に悩まされる患者さんも少なくありません。
線維筋痛症の発症原因はいまだ不明ですが、痛みを伝える神経系に障害が起こることで激しい痛みが生じると考えられています。
変形性関節症
変形性関節症は、関節の軟骨が減ることで骨と骨が直接ぶつかり、痛みが生じる病気です。
人間の体の関節部分には軟骨があり、日常生活の動作で起こる衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。
軟骨がすり減る原因は不明ですが、加齢によるものやホルモン分泌の変化によるもの、関節の酷使によるものなどが考えられています。
全身の関節に起こりうる病気ですが、特に多く見られるのが膝です。
痛みが出てきた場合は薬やリハビリテーション、手術療法による治療が検討されます。
腱鞘炎
腱鞘炎は、指の付け根に痛みや腫れが生じる病気です。
腱鞘炎は腱(親指を動かす働きをする組織)と腱鞘(腱が滑らかに動くように支える組織)が擦れ合うことで起こる炎症で、指や手首を酷使すると発症しやすくなります。
例えばスマートフォンの長時間利用や家事・子育てによる手首の酷使、スポーツによる手首の酷使などにより発症する場合が多いです。
腱鞘炎には親指の使い過ぎにより起こる『ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)』、指を曲げ伸ばす際にばねのような引っかかりが生じる『ばね指(弾発指)』などがあります。
これらの症状が悪化すると指が動かなくなるため注意が必要です。
化膿性関節炎
化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して炎症が起こり、化膿してしまう病気です。
主な原因菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などです。
細菌が関節内に侵入してしまう経路は以下の3パターンがあります。
- ・肺炎や尿路感染などのほかの感染巣から、病原菌が血流によって運ばれてくる
- ・周囲の皮膚や脂肪、筋肉、骨などに生じた感染が関節内まで広がる
- ・怪我や手術、関節内注射などにより細菌が侵入する
主な症状は感染の激しい痛みや腫れ、38度以上の発熱、全身の倦怠感などです。
症状を放置すると関節表面にある関節軟骨が破壊され、さらに進行すると骨が溶けてしまう場合もあります。
痛風
痛風は、尿酸の結晶が関節内に貯まることで炎症を引き起こす病気です。
足の親指の付け根に発症することが多いですが、足関節や足の甲、アキレスけんの付け根、膝関節、手関節などに発症する場合もあります。
痛風の大きな特徴は、風が吹いただけでも痛むほどの激痛発作です。
炎症が起きている関節部分に針を挿して関節液を採取し、その中に尿酸結晶が見られれば痛風と診断されます。
血液中の尿酸値が上昇することで起こるため、暴飲暴食した翌朝などに起こりやすいです。
脊椎関節炎
脊椎関節炎は、脊椎関節や胸鎖関節、仙腸関節、手指関節などの全身の複数の関節に炎症が生じる病気です。
脊椎関節炎はいくつか種類があり、主に以下の7つに分類されます。
- ・強直性脊椎炎
- ・乾癬性関節炎
- ・急性前部ブドウ膜炎に伴う脊椎関節炎
- ・炎症性腸疾患に伴う関節炎
- ・小児の脊椎関節炎
- ・分類不能関節炎
45歳以前に発症することが多く、安静で症状が悪化しやすい特徴があります。
まだ治療方法が確立されていない病気ですが、薬物療法やリハビリテーションなどの治療を行うことが多いです。
関節リウマチの主な原因・症状
関節リウマチは自己免疫反応の異常が原因で発症する病気です。
ここでは関節リウマチの主な原因や初期症状、進行後の症状、放置するリスクなどについて解説します。
主な原因
関節リウマチは自己免疫疾患の一種で、免疫システムが誤って自身の関節を攻撃することで発症します。
具体的な原因は明確に解明されていませんが、遺伝的要因や環境的要因が影響すると考えられています。
発症リスクを高める環境的要因は感染症やストレス、喫煙などです。
また、女性に多いことからホルモンバランスの変化も関与している可能性が指摘されています。
初期症状
関節リウマチの初期症状は手や指、足の関節に現れることが多く、特に朝起きたときに関節がこわばる症状が特徴です。
このこわばりは1時間以上続くことがあり、関節を動かすことで次第に軽減します。
また関節の腫れや軽度の痛みが生じ、左右対称に症状が出ることが多いのも特徴です。
さらに倦怠感や微熱、食欲不振などの全身症状を伴うこともあり、風邪や疲れと勘違いされてしまうこともあります。
進行後の症状
関節リウマチが進行すると、関節の炎症が悪化し、強い痛みや腫れが生じます。
軟骨や骨が破壊されることで関節の変形が進み、指が曲がる、手が握れないなど日常生活に支障をきたすようになります。
また膝や股関節に影響が及ぶと、歩行が困難になることもあるため注意が必要です。
放置するリスク
関節リウマチを放置すると、関節の変形や破壊が進み、最終的には関節の機能を失ってしまいます。
特に手や指の変形が進行すると、細かい作業が困難になり、日常生活の質が著しく低下します。
また全身に炎症が広がることで、肺疾患や心血管疾患のリスクが高まり、寿命に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。
関節の痛みやこわばりといった症状に気づいたらなるべく早めに医療機関を受診し、症状の進行を抑えることが大切です。
関節リウマチの診断基準・検査方法
関節リウマチの診断基準や検査方法について解説します。
診断基準
関節リウマチの診断には、米国および欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用する場合が多いです。
診断基準は以下の4項目あり、それぞれの項目ごとの点数を合計して6点以上なら関節リウマチと診断されます。
- ・症状がある関節の数
- ・症状が続いている期間
- ・血液検査での炎症反応の数値
- ・血液検査での抗CCP抗体やリウマトイド因子の数値
上記の診断基準は関節リウマチ以外の病気でも合計6点以上になる場合があるため、他の病気の可能性がないか十分注意する必要があります。
血液検査
血液検査ではさまざまな項目の数値をもとに、炎症の程度や関節リウマチの可能性を調べます。
関節リウマチの診断で特に重視される項目は『CRP(C反応性タンパク)』、『リウマトイド因子』、『抗CCP抗体』などです。
測定項目 | 特徴 |
---|---|
CRP(C反応性タンパク) | 体内で炎症や組織の破壊が起こると肝臓で生成される特殊なタンパク質。炎症の程度を調べるのに有効。 |
リウマトイド因子 | 自己免疫疾患にみられる自己抗体の一つ。関節リウマチ患者さんの約80%にみられるが、陰性でも関節リウマチの可能性は残る。 |
抗CCP抗体 | 関節リウマチの滑膜に存在するCCPを排除するために形成される自己抗体の一つ。早期の関節リウマチ診断に特に有効。 |
マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3) | 軟骨の成分を分解する酵素。関節リウマチの診断や治療経過の評価に有効。 |
血沈 | 赤血球が試薬内を沈んでいく速さを調べる項目。炎症の程度を調べるのに有効。 |
画像検査
画像検査では、関節や内臓の状態を調べることができます。
主な方法として『X線検査』、『MRI』、『超音波検査』などが挙げられます。
検査方法 | 特徴 |
---|---|
X線検査 | 関節の骨の状態を診る検査 |
MRI | 軟骨、腱、筋肉、滑膜、血管などを診る検査 |
超音波検査 | 手・足などの関節や骨の状態、滑膜炎を診る検査 |
関節リウマチの治療方法
関節リウマチの主な治療方法は以下の通りです。
- ・薬物療法
- ・生活習慣の改善
- ・体や関節の保温
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
薬物療法は、関節リウマチの基本的な治療方法です。
主に使用される薬として、以下の種類があります。
薬の種類 | 特徴 | 薬剤名 |
---|---|---|
抗リウマチ薬 | 免疫の働きをコントロールし、炎症を抑える |
|
生物学的製剤 | 炎症を引き起こす物質を阻害する作用がある。抗リウマチ薬で効果が不十分な場合に処方される |
|
JAK阻害薬 | 炎症を引き起こす酵素(JAK)の働きを阻害する |
|
関節の変形や破壊が進行した場合は、痛みや炎症を抑える鎮痛薬を使用したり、ヒアルロン酸注射を行ったり、『人工関節置換術』という手術を行ったりすることがあります。
生活習慣の改善
関節リウマチの治療では、生活習慣の改善も重要です。
具体的なポイントとしては以下が挙げられます。
- ・適度な運動習慣を身につける
- ・栄養バランスの整った食事をとる
- ・ストレスをため込まない
- ・関節に負担のかかる動作や姿勢を避ける
- ・禁煙する など
食事の改善や適度な運動、ストレス管理などを行い、症状を悪化させないように注意しましょう。
体や関節の保温
関節リウマチの症状は寒さによって悪化することが多いため、体や関節を温めることが重要です。
特に朝のこわばりが強い場合は、温熱療法を取り入れると関節の動きが良くなります。
入浴や温湿布、電気毛布などを活用して関節を温めることで、血流を促進して痛みを和らげる効果が期待できます。
また寒い季節には手袋や膝サポーター、レッグウォーマーなどを活用し、冷えを防ぐことが大切です。
ただし関節が腫れている場合は炎症が悪化する可能性があるため、医師と相談の上で他の方法を検討する必要があります。
まとめ
関節炎は『関節に起こる炎症の総称』、リウマチは『関節炎を起こす病気の一つ』です。
関節炎が起こる病気はリウマチのみでなく、線維筋痛症や変形性関節症、腱鞘炎などさまざまな病気の可能性があります。
適切な治療を行うためには、自己判断するのではなく、病院を受診して適切な診断を受けることが大切です。
『西尾久リウマチ整形外科』は、日本リウマチ学会専門医・指導医の院長によるリウマチ性疾患の専門診療を行っている病院です。
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