関節リウマチが間質性肺炎を合併する理由とは?検査・治療方法について解説
- 2025.07.10

関節リウマチは肺や気管の合併症を併発することがあり、その一つに間質性肺炎が挙げられます。
間質性肺炎は、肺の間質という部分に炎症が起こり、呼吸がしづらくなってしまう病気です。
この記事では、関節リウマチと間質性肺炎の関連性について解説します。
間質性肺炎の主な症状や発症原因、検査方法、治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
関節リウマチと間質性肺炎は合併することがある
関節リウマチと間質性肺炎は合併することがあります。
ここでは関節リウマチと間質性肺炎を合併する理由、発症する確率、合併する場合の生存率などについて解説します。
間質性肺炎を合併する理由
関節リウマチが間質性肺炎を合併する理由として、免疫反応の異常が挙げられます。
関節リウマチは関節だけでなく、肺の変化が起こることがあり、肺の間質という部位に炎症が起こると『間質性肺炎』に発展するのです。
肺で発症する可能性がある病気は間質性肺炎だけでなく、胸膜炎や血管炎、細気管支炎が起こる可能性もあります。
またリウマチ自体によって起こることもあれば、メトトレキサートやレフルノミドなどのリウマチ治療薬による薬剤性の間質性肺炎が起こることもあります。
これらの薬を服用し始めてから間質性肺炎を発症するまでの期間目安は以下の通りです。
薬の種類 | 発症までの期間 |
---|---|
抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、抗リウマチ薬、インターフェロン、漢方薬(小柴胡湯) | 1~2週間 |
高悪性腫瘍薬、抗不整脈薬(アミオダロン) | 数週間~数年 |
ゲフィチニブ | 4週間以内 |
また薬の投与量と発症リスクには関連性がないとされています。
間質性肺炎を発症する確率
関節リウマチの患者さんが間質性肺炎を併発する確率は、およそ10〜30%といわれています。
また、間質性肺炎が出てくる時期としては、関節リウマチと間質性肺炎を同時に診断されるケースが20~30%、関節リウマチ患者さんが間質性肺炎を発症するケースが50~80%とされており、関節リウマチ発症後に間質性肺炎を発症する患者さんが最も多いです。
間質性肺炎を合併している場合の生存率
関節リウマチと間質性肺炎を合併している患者さんは、生存率が低くなることが明らかになっています。
デンマーク全土で行われた報告では、間質性肺炎を合併していない関節リウマチ患者さんの5年死亡率は18%、合併している患者さんは39%という結果が出ました。
さらに日本の報告では、間質性肺炎を合併している関節リウマチ患者さんのうち、間質性肺炎の急性増悪(症状が急激に悪化すること)が18%の患者さんに見られたというデータがあります。
この急性増悪が、関節リウマチと間質性肺炎を合併している患者さんの死因の中で最も多かったと報告されています。
また間質性肺炎の急性増悪は、症状の進行に伴って発症リスクが高まるため、適切な治療により進行を予防することが大切です。
間質性肺炎とは
間質性肺炎は肺の間質という部分で炎症が起きることにより、呼吸がしづらくなってしまう病気です。
ここでは間質性肺炎の主な症状や原因、経過について解説します。
間質性肺炎の主な症状
間質性肺炎の主な症状として、咳や息切れ、痰などが挙げられます。
症状が進行すると着替えや入浴といった、日常の何気ない動作でも息切れが起こるようになります。
また初期段階には特に目立った症状が現れないことも少なくありません。
間質性肺炎の発症原因
間質性肺炎の発症原因は、遺伝的要因・環境要因・リスク因子の3つに分けられます。
遺伝的要因 | 遺伝子の多型 |
---|---|
環境的要因 | たばこ、歯周病、ウイルス、細菌性肺炎、胃から食道への逆流、微小な誤嚥、大気中の微細粒子(アンモニウム、鉄塵)など |
リスク因子 | 抗CCP抗体高値、リウマチ因子高値、男性、高齢、活動性の高い関節炎など |
間質性肺炎にはさまざまな原因がありますが、中には原因を特定できない『特発性間質性肺炎』というものもあります。
特発性間質性肺炎の明確な原因は不明ですが、間接的な影響を与えるリスク因子として喫煙が挙げられます。
特に特発性間質性肺炎の分類の1つである『特発性肺線維症』には、喫煙者が多いため、タバコをよく吸う方は注意が必要です。
また遺伝的な要因が大きいとみられる場合は、『家族性肺線維症』として区別されます。
間質性肺炎の経過
間質性肺炎にはいくつかの種類があり、患者さんによって進行スピードにも差があります。
数年かけてゆっくりと進行していく場合もあれば、急速に進行する場合もあるのです。
数日から1か月の間に急激に症状が悪化するものは急性増悪と呼ばれ、命の危険にかかわることもあります。
間質性肺炎の検査方法
間質性肺炎の検査方法は以下の通りです。
- ・聴診
- ・呼吸機能検査
- ・画像検査
- ・血液検査
- ・特殊検査
ここでは上記5つの検査方法についてそれぞれ解説します。
聴診
聴診は診察の基本的な手法の一つで、肺の異常を確認するために行われます。
聴診器を用いて胸部の複数の箇所から肺の音を聞き取り、間質性肺炎にみられる特徴的な音の有無を確認します。
間質性肺炎では、肺の線維化が進行するとパチパチ、パリパリといった『捻髪音』と呼ばれる音が聞こえることが多くなるのです。
ただし初期段階では異常が認められない場合もあるため、聴診だけでは確定診断は困難です。
そのため聴診の結果を踏まえつつ、他の検査を組み合わせて診断する必要があります。
呼吸機能検査
呼吸機能検査は、肺のふくらみや酸素を取り込む能力を確認するための検査です。
間質性肺炎では肺の弾力性が低下し、肺が膨らみにくくなる障害が特徴的にみられます。
代表的な指標として『肺活量』や『一秒量』があり、間質性肺炎では肺活量の低下が顕著になります。
また『拡散能検査』を行うことで、酸素の取り込み能力を評価することも可能です。
間質性肺炎では肺胞壁の肥厚や線維化により拡散能が低下するため、この検査は疾患の進行度を知る上でも有用になります。
ちなみに肺活量は80.0%以上が基準範囲となり、79.9%以下であれば間質性肺炎や肺線維症が疑われ、一秒量では69.9%以下が肺疾患の疑いのある数値となります。
画像検査
画像検査は、間質性肺炎の診断において重要な手段の一つです。
胸部レントゲンや胸部CTなどの検査があり、肺全体の異常がないかを確認します。
間質性肺炎では、肺の下部を中心にすりガラス状の陰影や線維化が見られることが多いです。
またより詳細な情報を得るために『HRCT(高分解能CT)検査』を行う場合もあります。
HRCTでは肺の構造変化を詳細に観察でき、『蜂巣肺』と呼ばれる典型的な線維化のパターンや、すりガラス状陰影の広がりを評価することが可能です。
これにより病型の特定や病気の進行度を判断できます。
血液検査
血液検査では、炎症や自己免疫疾患の関与を調べることができます。
一般的に間質性肺炎の検査では、『KL-6』や『SP-D』といった血液検査の項目を疾患マーカーとして使用します。
KL-6は肺胞Ⅱ型上皮細胞に発現するシアル化糖蛋白で、間質性肺炎では急性増悪時に上昇する特徴がある項目です。
SP-Dも肺胞Ⅱ型上皮細胞で産生・分泌される蛋白の一種で、活動性の指標として使用されます。
またリウマチ因子(RF)や抗核抗体(ANA)などを調べることで、膠原病に関連した間質性肺炎の可能性も評価することが可能です。
リウマチ因子が高いほどリウマチの発症リスクが高くなり、抗核抗体はリウマチ患者さんのうち20~30%の割合で陽性になる項目です。
さらにLDH、血沈、CRPなどの検査項目もあり、炎症の有無や進行具合を把握するのに役立ちます。
特殊検査
間質性肺炎の検査では、より詳しい診断を行うために特殊検査が必要になる場合もあります。
代表的なものとして『気管支鏡検査』があり、内視鏡を用いて肺の内部を直接観察し、サンプルの採取や肺組織の生検を行うことができます。
局所麻酔を行って検査を受けるため、原則入院が必要です。
気管支鏡検査には、気管支肺胞洗浄(BAL)と経気管支肺生検(TBLB)の2つの手法があります。
- ・気管支肺胞洗浄(BAL):生理食塩水を使用して肺の一部を洗う検査方法
- ・経気管支肺生検(TBLB):数ミリ大の肺組織を採取する検査方法
上記の方法で病型の診断がつかない場合には、『外科的肺生検』を行う場合があります。
胸腔鏡の使用または開胸により、数センチ大の肺組織を採取し、詳細な病理診断を行う検査方法です。
間質性肺炎の治療方法
間質性肺炎の治療方法は以下の通りです。
- ・薬物療法
- ・酸素療法
- ・日常生活の管理
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
間質性肺炎の薬物療法では、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤が使用されます。
副腎皮質ステロイド剤は副腎から作られるホルモンの一種で、体の中の炎症を抑えたり体の免疫力を抑制したりする作用があります。
免疫抑制剤は、体内で起こっている異常な免疫反応や炎症反応を抑える薬です。
特発性肺線維症の場合は、抗線維化剤(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を使用するのが一般的ですが、治療薬による治癒が困難なため進行抑制を目標とします。
さらに間質性肺炎は病型によって治療の効きやすさが異なるため、場合によっては薬物療法であまり効果が得られないケースもあるため注意が必要です。
またいずれの薬剤にも副作用(食欲不振や胃部不快感、下痢、肝機能障害など)があるため、医師の判断によっては、薬物療法を行わずに経過観察をする場合もあります。
酸素療法
酸素療法は、血液中の酸素不足によって日常生活に支障が出てしまっている場合に選択される治療方法です。
自宅に酸素濃縮器や液体酸素タンクを設置し、細いチューブを通して鼻から酸素を吸入します。
また携帯用酸素ボンベもあり、外出や旅行先で使用することも可能です。必要に応じて、呼吸リハビリテーションを行う場合もあります。
日常生活の管理
間質性肺炎の治療では、日常生活の管理が重要になります。
具体的なポイントは以下の通りです。
- ・禁煙する
- ・マスクの着用や手洗いなどを心がけて風邪を予防する
- ・栄養バランスの整った食事をとる
- ・適度な運動を行う
上記のほか、原因がある間質性肺炎の場合は、その原因の改善・治療が優先されます。
例えば関節リウマチが原因となっている場合は、ステロイド薬や免疫抑制薬が処方されるケースが多いです。
また粉塵やカビ・ペットの毛などの吸入、薬剤、健康食品などが原因となっている場合は、これらを避ける生活を意識することで、症状が改善する場合があります。
間質性肺炎は早期発見・早期治療が重要
間質性肺炎は早期発見・早期治療が重要な病気です。
症状が進行し肺の線維化が進んでしまうと、呼吸機能の回復が難しくなってしまいます。
そのため、肺の線維化が進んでしまう前に、なるべく早い段階で発見・治療を行うことが重要です。
間質性肺炎は初期段階では自覚症状がほとんどなく、気づきにくいため、定期的に検査を受けて肺の機能が正常か確認する必要があります。
また風邪でもないのに空咳が続いたり、階段の上り下りで息切れするようになったら、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
関節リウマチが間質性肺炎を合併する理由は、免疫反応の異常が起こるためです。
また関節リウマチそのものが原因で発症する場合もあれば、メトトレキサートやレフルノミドなどのリウマチ治療薬による薬剤性の間質性肺炎が起こることもあります。
間質性肺炎を合併している関節リウマチ患者さんは生存率が低くなるというデータもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
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