骨粗鬆症は治るのか?骨密度の改善と治療で目指すゴール

  • 2026.08.07

骨粗鬆症は治るのか?骨密度の改善と治療で目指すゴール

「骨粗鬆症は治るのか」という問いに、いまの医学が出している答えは「完治はしないが、骨密度を改善し骨折を防ぐことはできる」というものです。診察室でも、診断を受けたばかりの方から「もう骨は戻らないのか」「ずっと薬を続けなければいけないのか」と相談を受けることが少なくありません。

この記事では、治療で骨密度はどこまで変わるのか、どんな薬を使い費用はいくらかかるのか、食事や運動でできること、薬を中断したときに起こることまで、判断に必要な情報を順に整理します。

骨粗鬆症は「完治」する病気ではない

骨粗鬆症は「完治」する病気ではない

「治る」という言葉が指す状態は、病気ごとに違います。骨粗鬆症における「治る」が何を意味するのか、そして治療で本当に目指すべきゴールがどこにあるのかを整理します。

「治る」と「コントロールする」の違い

風邪や骨折のように、原因を取り除けば元の状態に戻る病気を「治る病気」と呼びます。一方、骨粗鬆症は加齢や閉経後のホルモン変化など、体の仕組みそのものが背景にあるため、一度低下した骨密度を若い頃の水準に完全に戻すことは現在の医学では困難です。

ただし、治療によって骨密度の低下を止めたり、ある程度回復させたりすることは可能です。高血圧や糖尿病と同じように、「完治」ではなく「コントロール」していく病気だと考えるとわかりやすいでしょう。治療を続けている間は骨折リスクを抑えられるという意味で、「付き合っていく」という表現がこの病気にはよく当てはまります。

治療の目的は「骨折を防ぐこと」

骨粗鬆症そのものには痛みがないため、「骨が弱くなっているだけなら放っておいてもいいのでは」と感じる方もいます。しかし骨粗鬆症の本当のリスクは骨折です。特に背骨(椎体)や太ももの付け根(大腿骨近位部)の骨折は、寝たきりにつながる可能性があり、生活の質を大きく損ないます。

背骨の骨折は、自分では気づかないうちに起きている「いつの間にか骨折」も珍しくありません。身長が2cm以上縮んだ、背中が丸くなってきたと感じたら、それは骨折のサインかもしれません。骨粗鬆症の治療は「骨折を起こさない生活を続けるための治療」であり、骨密度の数値を元に戻すことだけがゴールではないのです。

骨密度は治療で改善できるのか

骨密度は治療で改善できるのか

「治療を始めても本当に骨は強くなるのか」「効果が出るまでにどのくらいかかるのか」は、診察室でよく受ける質問です。ここでは、骨密度を測る指標と、薬を始めてから数値が動くまでの目安、改善の幅を整理します。

骨密度検査とYAM値の読み方

骨粗鬆症の診断には、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)という検査で骨密度を測定します。検査結果は、20〜44歳の健康な方の平均骨密度を100%としたときに、自分の骨密度が何%にあたるかを示す「YAM値」(Young Adult Mean)という指標で表されます。

YAM値が70%未満の場合に骨粗鬆症と診断されます。70%以上80%未満は「骨量減少」で、いわゆる予備群の状態です。また、過去に背骨や太ももの付け根の脆弱性骨折がある方は、YAM値が80%未満でも骨粗鬆症と診断されることがあります。

自分のYAM値を知ることは、治療の必要性を判断するだけでなく、治療効果を追跡するための基準にもなります。「今の自分の骨がどのくらいの強さか」を数字で把握しておくことが、治療の第一歩です。

参考:骨粗鬆症の診断 – 骨検

治療で骨密度はどのくらい変わるか

薬物治療を始めると、骨密度の変化が数値として表れるまでに半年〜1年程度かかります。骨は日々少しずつ作り替えられており(骨代謝)、この入れ替わりのサイクルが数ヶ月単位であるため、効果が目に見えるまでには時間が必要です。

骨密度の上昇幅は薬剤によって異なります。各薬剤の添付文書に記載された国内(一部は国際共同)臨床試験での腰椎骨密度の上昇率(ベースラインからの変化率)は次のとおりです。

薬剤 投与期間 腰椎骨密度の上昇率
アレンドロネート(ビスホスホネート) 52週(1年) 約6.3%
デノスマブ 1年 / 2年 約6.6% / 約9.1%
テリパラチド 1年 / 2年 約10.0% / 約13.4%
ロモソズマブ 1年 約13.1%

骨密度が劇的に回復しなくても、骨折を防げていれば治療は成功です。低下の速度がゆるやかになるだけでも骨折リスクは下がるため、数字の上昇幅だけにとらわれず、骨折の有無で効果を判断していきます。

定期的に骨密度検査を受けることで、治療が効いているかどうかを客観的に確認できます。半年〜1年ごとの検査が一般的で、数値の推移を見ながら薬の変更や追加を検討していきます。

参考:ボナロン錠35mg(アレンドロネート)プラリア皮下注60mgシリンジ(デノスマブ)フォルテオ皮下注キット600μg(テリパラチド)イベニティ皮下注105mgシリンジ(ロモソズマブ)(各薬剤の添付文書)

骨粗鬆症の治療薬にはどんな種類があるか

骨粗鬆症の治療薬にはどんな種類があるか

骨粗鬆症の薬は大きく分けて、「骨が壊れるのを抑える薬」と「骨を作る力を高める薬」の2タイプがあります。どちらを使うかは、骨密度の値や骨折の有無、年齢などを総合的に判断して決めます。

骨吸収を抑える薬

骨は常に古い部分が壊され(骨吸収)、新しい骨が作られる(骨形成)というサイクルを繰り返しています。

骨粗鬆症の治療薬にはどんな種類があるか

骨粗鬆症ではこのバランスが崩れ、壊れる量が作られる量を上回っている状態です。骨吸収を抑える薬は、この「壊れすぎ」にブレーキをかけます。

薬の種類 投与方法 頻度の目安
ビスホスホネート製剤 内服または注射 週1回〜月1回(内服)、月1回〜年1回(注射)
デノスマブ 皮下注射 半年に1回
SERM 内服 毎日

ビスホスホネート製剤は最も広く使われている薬で、内服薬の場合は起床後すぐに水で服用し、30分は横にならないという服用ルールがあります。デノスマブはビスホスホネートより強い骨吸収抑制効果が期待できますが、中断すると骨密度が急速に低下する性質があるため、自己判断での中止は避ける必要があります。SERMは閉経後の女性に使われることが多く、エストロゲンに似た作用で骨を守ります。

骨形成を促す薬

骨折リスクが高い方や、骨吸収抑制薬だけでは十分な効果が得られない場合に使われます。

薬の種類 投与方法 頻度の目安 使用期間
テリパラチド 自己注射または通院注射 毎日〜週2回(自己注射)、週1回(通院) 最長2年
ロモソズマブ 皮下注射 月1回 1年間

テリパラチドは骨を作る細胞(骨芽細胞)を直接活性化させる薬です。ロモソズマブは骨形成の促進と骨吸収の抑制を同時に行う薬で、心臓や血管の病気がある方には使えない場合があります。

治療薬の費用と保険適用

骨粗鬆症の治療薬はすべて健康保険が適用されます。1割負担の場合の自己負担額の目安は以下のとおりです。

薬のタイプ 自己負担の目安(1割負担)
内服薬(ビスホスホネート等) 月に数百円〜1,000円程度
デノスマブ注射(半年に1回) 1回あたり3,000円程度
テリパラチド自己注射(毎日〜週2回) 月に5,000円程度
ロモソズマブ注射(月1回) 1回あたり5,000円程度

費用が気になって治療を始められないという方もいますが、骨折した場合の入院費・手術費・リハビリ期間を考えると、予防のための治療費は長い目で見れば小さな負担です。費用の不安がある場合は、受診時に遠慮なくご相談ください。

関連記事:骨粗鬆症の治療で使われる注射の種類は?それぞれの特徴や注意点について解説

薬以外にできること、食事と運動の役割

薬以外にできること、食事と運動の役割

薬物治療だけでなく、日々の食事と運動も骨粗鬆症の治療を支える重要な柱です。薬の効果を十分に引き出すためにも、栄養と運動を並行して取り入れることが大切です。

骨を強くする栄養素とその摂り方

骨を強く保つには、カルシウムだけでなく複数の栄養素を組み合わせて摂ることが大切です。

栄養素 役割 多く含む食品 摂取の目安
カルシウム 骨の材料になる 牛乳・小魚・豆腐・小松菜・ヨーグルト 1日700〜800mg(牛乳コップ1杯で約220mg)
ビタミンD カルシウムの腸からの吸収を助ける 鮭・きのこ類 食事に加え、屋外で日光を浴びることでも体内で合成される
ビタミンK 骨にカルシウムを取り込む働きを促す 納豆・ブロッコリー 納豆1パックで1日分の目安量をほぼカバー
タンパク質 骨を支える筋肉を維持する 肉・魚・卵・大豆製品 毎食いずれかを取り入れる

カルシウムだけを摂っても骨には定着しません。ビタミンDとビタミンKがそろって初めてカルシウムが骨に届くため、表の4つをバランスよく摂ることを意識してみてください。

参考:骨粗鬆症の予防のための食生活|厚生労働省 e-ヘルスネット

骨に効果的な運動とは

骨は負荷がかかることで強くなる性質を持っています。そのため、ウォーキングやジョギングのように体重が骨にかかる運動(荷重運動)が骨密度の維持に効果的です。1回30分以上のウォーキングを週3回以上続けることが目安になります。

自宅で手軽にできる運動として「かかと落とし」があります。つま先で立ち、力を抜いてストンとかかとを落とすだけの動作ですが、着地の衝撃が骨に刺激を与え、骨代謝を促す効果が期待できます。1日20〜50回程度を目安に、無理のない範囲で続けてみてください。

運動と一緒に取り入れたいのが日光浴です。皮膚に日光が当たるとビタミンDが体内で合成され、カルシウムの吸収を助けて骨密度の維持につながります。1日に必要なビタミンDをつくるための日光浴時間の目安は、晴天の正午で夏は数分程度、冬は20〜30分程度、北日本の冬では1時間以上とされており、季節と地域によって大きく変わります(国立環境研究所の試算)。

冬季や緯度の高い地域では時間が長く必要になるため、屋外でのウォーキングを習慣にすると運動と日光浴を兼ねられて効率的です。ただし、すでに骨密度が大きく低下している方や背骨の骨折がある方は、激しい運動やお腹を丸める動作(腹筋運動など)で新たな骨折を起こす危険があります。どんな運動が安全か、主治医と相談してから始めましょう。

参考:体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定|国立環境研究所

治療をやめるとどうなるか

治療をやめるとどうなるか

骨粗鬆症は痛みがないため、効果を実感しにくいまま薬を続けることになります。「数字も悪くないし、もう薬はいらないのでは」と感じる方も少なくありません。ただし、薬の中断には独自のリスクがあります。

中断時に起こることと、いつまで治療を続けるのかを整理します。

自己判断での中断が危険な理由

骨粗鬆症は痛みがなく、薬の効果も目に見えにくいため、「もう十分だろう」と自己判断で治療を中断してしまう方が少なくありません。しかし、治療を中断すると骨密度は再び低下に転じます。

特に注意が必要なのがデノスマブ(半年に1回の注射薬)です。デノスマブは中止後に骨吸収が一過性に強まり、複数の背骨に同時に骨折が生じる「多発性椎体骨折」があらわれることが報告されています。添付文書でも、海外の閉経後骨粗鬆症患者を対象とした第Ⅲ相試験で、治療中止後の追跡においてデノスマブ群はプラセボ群より多発性椎体骨折の発生割合が高かったことが記載されており、中止する場合は別の骨吸収抑制薬への切り替えを考慮する必要があるとされています。

治療の中断や変更は必ず主治医と相談の上で行うようにしてください。「痛みがない=治療が不要」ではないことを覚えておくことが大切です。

参考:プラリア皮下注60mgシリンジ(デノスマブ)添付文書|PMDA

骨粗鬆症の治療はいつまで続けるのか

骨粗鬆症の治療に明確な「終了時期」はありません。閉経後のエストロゲン減少のように、骨密度低下の原因そのものが生涯続くケースが多いためです。

ただし、「一生同じ薬を飲み続けなければならない」というわけでもありません。骨密度が十分に改善し骨折リスクが低い状態を保てていれば、薬の種類を変えたり、休薬期間を設けたりする場合もあります。治療のゴールや計画は、定期的な検査結果をもとに主治医と話し合いながら決めていくものです。

骨粗鬆症の治療に関するよくある質問

骨粗鬆症の治療に関するよくある質問

骨粗鬆症は何歳くらいから注意が必要ですか?

女性は閉経前後の50歳頃から、エストロゲンの急激な減少にともなって骨密度が下がり始めます。骨粗鬆症は男性の数倍の頻度で女性に起こることが知られており、閉経後は年1回の骨密度測定が推奨されます。男性は女性ほど急激な低下はありませんが、70歳以降に骨粗鬆症のリスクが高まります。

また、年齢に関わらず注意が必要なのが「ステロイド薬を長期間使用している方」です。ステロイドには、骨を作る働きを弱め、骨を壊す働きを強める作用があり、内服開始から数ヶ月で骨量が8〜12%低下することが知られています。骨折リスクは投与開始後3〜6ヶ月でピークに達するため、ステロイドを継続的に使用している方は、骨密度の値に関わらず予防的な治療が検討されます。

家族に骨粗鬆症の方がいる場合も、早めに骨密度検査を受けておくと安心です。

参考:閉経後骨粗鬆症|日本内分泌学会 / ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014 年改訂版|日本骨代謝学会

骨粗鬆症の検査はどこで受けられますか?

整形外科やリウマチ科、一般内科などで受けることができます。自治体の健診で骨密度測定が含まれている場合もあります。より精密な診断にはDXA法による測定が適しており、腰椎や大腿骨で測定できる医療機関を選ぶとより正確な結果が得られます。

骨粗鬆症と診断されたら日常生活で避けるべきことはありますか?

転倒を防ぐことが最も重要です。家の中の段差をなくす、滑りにくい靴を履く、手すりを活用するなど、転ばない環境を整えましょう。また、過度な飲酒や喫煙は骨密度の低下を早めるため、控えることが望ましいです。

重いものを急に持ち上げる動作や、腰を強くひねる動作も骨折のリスクにつながりますので注意してください。

まとめ

まとめ

骨粗鬆症は完治する病気ではありませんが、「治らないから仕方ない」と諦める病気でもありません。薬物治療で骨密度の低下を抑え、食事と運動で骨の健康を支えることで、骨折を防ぎ、自分らしい生活を長く続けることができます。骨密度の改善は数ヶ月〜1年単位でゆっくり進むため、焦らず定期的な検査で効果を確認しながら取り組んでいきましょう。

西尾久リウマチ整形外科は、日本骨粗鬆症学会認定医・日本リウマチ学会指導医による診療を行っており、看護師・作業療法士もリウマチ財団認定の専門資格を持つチームで対応しています。骨密度測定から薬物療法・食事や運動の指導・経過観察までを一貫して見られる体制で、ステロイドを長期使用されている方や、リウマチをはじめとする他疾患を併発している方のご相談にも対応しています。「治療を始めるべきか迷っている」段階や「いまの薬で大丈夫か」といった節目のご相談こそ、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

医療法人社団香栄会 西尾久リウマチ整形外科

院長 王 興栄おう こうえい

医療の本質は、人と人との繋がりから築かれる信頼関係にあると考えています。
患者様一人ひとりに寄り添い、その方にとって最善の医療を提供できるよう努めてまいります。

経歴

  • 暁星学園高等学校卒業
  • 昭和医科大学医学部卒業
  • 昭和医科大学医学部大学院卒業
  • 昭和医科大学整形外科入局
  • 新潟県立リウマチセンター国内留学
  • 東京女子医大東医療センター整形外科入局
  • フランスParis大学リウマチ科留学
  • 東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター勤務
  • 西尾久リウマチ整形外科開業

資格・認定

  • 日本整形外科学会認定専門医・指導医
  • 日本リウマチ学会認定専門医・指導医・評議員
  • 日本リウマチ学会登録ソノグラファー(リウマチ性疾患の関節超音波検査資格)
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医・脊椎脊髄病医
  • 日本リウマチ財団登録医
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 厚労省認定義肢装具等適合判定医
  • 東京都難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法第15条指定医
  • 東京女子医科大学整形外科 非常勤講師
  • 昭和医科大学医学部 兼任講師

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