交通事故に遭ったら何科を受診すべき?症状別の判断基準と整形外科の役割

  • 2026.08.12

交通事故に遭ったら何科を受診すべき?症状別の判断基準と整形外科の役割

交通事故後に最初に受診すべきは整形外科です。事故の衝撃でけがをしやすいのは骨・関節・筋肉・靭帯・神経といった「運動器」で、これを専門に診断・治療するのが整形外科だからです。

この記事では、頭部外傷など他の診療科が優先になるケース、整形外科で受ける検査と治療の流れ、自賠責保険を使った治療費の負担、整骨院との使い分け、受診が遅れたときに起こることまで、事故直後の判断に必要な情報をまとめます。

交通事故でまず整形外科を受診すべき理由

交通事故でまず整形外科を受診すべき理由

交通事故で身体が受ける衝撃は、多くの場合「運動器」と呼ばれる骨・関節・筋肉・靭帯・神経に集中します。この運動器の損傷を専門に診断・治療するのが整形外科です。

衝撃が身体に与える影響は外から見えにくい

追突や衝突の衝撃は、シートベルトで体幹が固定されていても首や腰に大きな力がかかります。骨折のように明らかな変形があれば気づきやすいのですが、靭帯の損傷や筋肉の微細な断裂は外見上わかりません。整形外科ではレントゲンやMRIといった画像検査で、こうした目に見えない損傷を確認します。

事故直後はアドレナリンが分泌されて痛覚が鈍くなるため、痛みやしびれは数時間から数日経ってから現れることがあります。痛みがなくても事故当日か翌日には整形外科を受診しておくことで、隠れた損傷を早い段階で見つけられます。

診断書の作成と保険手続きへの対応ができる

整形外科は医療機関ですので、医師が診断書を発行できます。この診断書は警察に人身事故として届け出る際に必要になるほか、自賠責保険や任意保険の手続きにも欠かせない書類です。

整骨院や接骨院では診断書を発行できません。最初から整骨院だけに通うと、後の保険手続きや後遺障害の認定で必要な書類が揃わない事態になります。整骨院でのリハビリを希望する場合でも、まず整形外科で診断を受け、医師の判断のもとで併用するのが基本の流れです。

交通事故の症状別に受診すべき診療科を判断する

交通事故の症状別に受診すべき診療科を判断する

交通事故で生じる症状は多岐にわたります。すべてを整形外科だけでカバーできるわけではなく、症状によっては他の診療科が適切な場合もあります。

主な症状 受診すべき診療科 理由
首・腰・肩・膝の痛み、しびれ 整形外科 骨・関節・筋肉・神経の損傷が専門
頭痛、めまい、吐き気、意識障害 脳神経外科 頭部外傷や脳内出血の可能性
腹部の強い痛み、血尿 外科・泌尿器科 内臓損傷の可能性
深い切り傷、やけど 形成外科・皮膚科 傷跡を最小限にする処置
事故後の不眠、フラッシュバック 心療内科・精神科 心的外傷後ストレス(PTSD)の可能性

迷ったときは整形外科のある総合病院が安心

複数の症状がある場合や、自分がどこを痛めたかはっきりしない場合は、整形外科を含む医療機関を選ぶと診療の入り口として機能します。整形外科の医師が他の診療科の必要性を判断し、必要なら紹介してくれます。

ただし、200床以上の大病院(特定機能病院・地域医療支援病院など)を紹介状なしで受診すると、初診時に選定療養費として7,000円以上が別途かかります(2022年10月の制度改定)。交通事故の場合は事情を伝えれば免除されるケースもありますが、まずはクリニックの整形外科で診察を受け、必要に応じて大病院を紹介してもらう流れが現実的です。

参考:紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の『特別の料金』の見直しについて|厚生労働省

頭を打った場合はまず脳神経外科を優先する

事故で頭部をぶつけた場合は、整形外科よりも先に脳神経外科を受診してください。頭部外傷は時間の経過とともに脳内で出血が広がることがあり、数時間後に急変するケースもあります。頭痛・吐き気・意識がぼんやりするといった症状がなくても、頭を打った事実がある時点でCT検査を受けておくことが重要です。

脳神経外科で問題がないことが確認できたら、そのあとで首や腰の痛みについて整形外科を受診する流れになります。

交通事故後に整形外科で行われる検査と治療

交通事故後に整形外科で行われる検査と治療

整形外科を受診すると、どのような検査・治療が行われるのか。受診前に流れを知っておくと、当日の不安が軽減します。

まず画像検査で損傷の有無を確認する

最初に行われるのはレントゲン撮影で、骨折や関節のずれがないかを確認します。レントゲンで骨に異常がなくても、靭帯や椎間板など軟部組織の損傷が疑われる場合はMRI検査を追加します。

MRIは骨以外の組織まで描出できるため、むちうち(頚椎捻挫)のような症状の原因を特定するのに有効です。検査結果はすべて画像として記録に残り、この記録が診断書の根拠になります。保険会社への治療費請求や後遺障害の認定にも、この画像と医師の所見が使われます。

痛みの緩和と機能回復のための治療

損傷の内容に応じて、投薬・物理療法・リハビリテーションを組み合わせて治療を進めます。急性期(事故直後から1〜2週間程度)は炎症を抑える薬や湿布で痛みをコントロールし、炎症が落ち着いてきたら運動器リハビリテーションで関節の動きや筋力を回復させていきます。

むちうちの場合、首の可動域が狭くなったり、肩から腕にかけてしびれが出たりすることがあります。リハビリではこうした症状に対して、理学療法士が個別にプログラムを組み、段階的に回復を進めます。

治療期間は個人差が大きく、症状が軽ければ数週間で改善する方もいる一方、慢性化すると半年以上通院が続くこともあります。リハビリの進捗を診察の都度確認しながら、症状に合わせて頻度や内容を調整していきます。

交通事故後に受診が遅れるとどうなるか

交通事故後に受診が遅れるとどうなるか

「あまり痛くないから」と受診を先延ばしにすると、症状そのものの回復が遅れるだけでなく、保険会社に事故との因果関係を認めてもらいにくくなります。

症状が悪化してから治療を始めると回復に時間がかかる

むちうちを例に挙げると、首まわりの筋肉が損傷を受けた後、時間が経つと筋肉のこわばり(筋スパズム)が生じて血流が悪くなります。血流が悪くなると痛み物質がたまりやすくなり、さらに筋肉がこわばるという悪循環に入ります。早い段階で適切な処置を行えばこの悪循環を断ち切れますが、放置して慢性化すると治療期間が長引く傾向があります。

事故との因果関係が認められにくくなる

受診が遅れるほど、保険会社が「その症状は本当に事故が原因か」を疑いやすくなり、治療費や慰謝料の請求が認められにくくなります。事故から2〜3日以内、遅くとも1週間以内の受診が目安です。

また、人身事故として警察に届け出るには医師の診断書が必要です。届出が遅れると物損事故のまま処理され、後から人身事故に切り替える手続きが煩雑になります。

交通事故の治療費は誰が負担するのか

交通事故の治療費は誰が負担するのか

交通事故の治療費には、被害者が窓口で自己負担しなくても通院できる仕組みがあります。

加害者側の保険会社が直接支払う仕組み

交通事故で被害者になった場合、加害者が加入している任意保険会社が病院に直接治療費を支払う「一括対応」が一般的です。この場合、窓口での自己負担は原則発生しません。受診時に「交通事故です」と伝え、加害者側の保険会社名と連絡先を病院に伝えれば手続きが始まります。

自賠責保険は傷害に対して被害者1名につき120万円が上限で、この範囲内で治療費・休業損害・慰謝料が支払われます。治療が長引いて自賠責保険の上限を超える場合は、加害者の任意保険から追加で支払われるのが通常の流れです。

参考:限度額と補償内容|国土交通省

すぐに保険対応ができない場合の対処

事故直後で保険会社との連絡がまだ取れていない場合は、いったん自費または健康保険を使って受診し、後日保険会社に請求する方法があります。健康保険を使う場合は、加入している健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。

いずれにしても、保険の手続きが整うまでの間に受診を遅らせる必要はありません。治療費は後から精算できるため、まず受診することを優先してください。

整形外科と整骨院の違いを正しく理解する

整形外科と整骨院の違いを正しく理解する

交通事故の治療先として「整骨院」を考える方もいますが、整形外科と整骨院は役割が異なります。両者の違いを理解しておくと、適切な受診先を選びやすくなります。

整形外科は「診断と治療」、整骨院は「施術」

整形外科には医師が常駐し、レントゲン・MRIなどの検査機器を使って損傷の部位と程度を診断します。診断に基づいて投薬、注射、リハビリテーションなどの治療を行い、必要に応じて診断書や後遺障害診断書を作成します。

一方、整骨院には柔道整復師が在籍し、手技療法(マッサージや骨格の調整)を中心とした施術を行います。画像検査はできず、診断書も発行できません。

併用する場合は整形外科の通院を途切れさせない

整骨院での施術を併用する場合、整形外科の通院を継続することが前提になります。整形外科への通院が途絶えると、保険会社が「治療の必要性が認められない」として治療費を打ち切る可能性があるため、整形外科の医師に整骨院の利用を伝え、両者を並行して進めるのが基本です。

後遺障害の認定を受ける際にも、整形外科での通院記録と医師の所見が不可欠です。整骨院だけの通院記録では、保険手続き上は十分でない場面が生じます。

交通事故の受診に関するよくある質問

交通事故の受診に関するよくある質問

痛みがなくても病院に行くべきですか?

行くことをおすすめします。交通事故の衝撃で受けた損傷は、痛みとして自覚するまでに数日かかることがあります。事故直後はアドレナリンの影響で痛みを感じにくく、日が経ってから首や腰に症状が出るケースは珍しくありません。

症状がなくても画像検査を受けておくことで、異常の有無を客観的に確認できます。

事故から1週間以上経ってから痛みが出ました。今から受診しても大丈夫ですか?

受診は可能です。ただし、事故から時間が経つほど「事故が原因の症状」と認められるハードルが上がります。できるだけ早く整形外科を受診し、医師に事故の状況と症状の経過を正確に伝えてください。

子どもが交通事故に遭った場合も整形外科でいいですか?

基本的には整形外科で対応できます。子どもの場合、自分の症状をうまく言葉にできないことがあるため、保護者が事故の状況(どこをぶつけたか、どの方向から衝撃を受けたか)をできるだけ詳しく医師に伝えてください。頭を打った可能性がある場合は脳神経外科の受診を優先します。

まとめ

まとめ

交通事故に遭ったら、まず整形外科を受診するのが基本です。頭を打った場合は脳神経外科を優先し、それ以外の痛みやしびれは整形外科で画像検査を受けて損傷の有無を確認します。受診は早いほどよく、できれば事故当日、遅くとも2〜3日以内が目安です。

痛みがない場合でも受診しておくことが、隠れた損傷の早期発見と保険手続きの両面で重要になります。

西尾久リウマチ整形外科は、日本整形外科学会専門医・指導医・運動器リハビリテーション医による診療を行い、運動器リハビリテーション施設基準Ⅰのもとで理学療法士・作業療法士による個別リハビリを提供しています。交通事故による怪我については、自賠責保険・任意保険の一括対応に対応し、初診からリハビリ・診断書発行・後遺障害認定のための医学的所見作成まで一貫してサポートします。事故直後の不安なタイミングこそ、まずは一度ご相談ください。

この記事の監修者

医療法人社団香栄会 西尾久リウマチ整形外科

院長 王 興栄おう こうえい

医療の本質は、人と人との繋がりから築かれる信頼関係にあると考えています。
患者様一人ひとりに寄り添い、その方にとって最善の医療を提供できるよう努めてまいります。

経歴

  • 暁星学園高等学校卒業
  • 昭和医科大学医学部卒業
  • 昭和医科大学医学部大学院卒業
  • 昭和医科大学整形外科入局
  • 新潟県立リウマチセンター国内留学
  • 東京女子医大東医療センター整形外科入局
  • フランスParis大学リウマチ科留学
  • 東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター勤務
  • 西尾久リウマチ整形外科開業

資格・認定

  • 日本整形外科学会認定専門医・指導医
  • 日本リウマチ学会認定専門医・指導医・評議員
  • 日本リウマチ学会登録ソノグラファー(リウマチ性疾患の関節超音波検査資格)
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医・脊椎脊髄病医
  • 日本リウマチ財団登録医
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 厚労省認定義肢装具等適合判定医
  • 東京都難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法第15条指定医
  • 東京女子医科大学整形外科 非常勤講師
  • 昭和医科大学医学部 兼任講師

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